公認心理師とは?公認心理師になるには
こんにちは、管理人Rです。
今回は「公認心理師」についてご紹介です。
臨床心理士が民間資格で最も知られている資格ですが、国家資格として心理系の資格が2017年に初めてできました。
それが「公認心理師」です。
国家資格となったことで支援の幅が広がったり、心理系の職が拡大することが期待されます。
では、公認心理師の資格はどうやったら取得できるのでしょうか。
既に社会で働いている方々、例えば学校の先生や看護師も取得を目指せるのかどうかご紹介していきます。
この記事を読むとわかること
- 公認心理師とは
- 公認心理師になるには
- 公認心理師を目指す人へ
この記事を書いてくれた人
この記事は、養護教諭として15年間、スクールカウンセラー(公認心理師)として2年間、小中学生と保護者への教育相談やカウンセリングを行ってきたN.Yさんに執筆頂きました。
N.Yさんは、独学で心理学を勉強し、公認心理師試験に合格した経験があります。
大学で心理学専攻であり、臨床心理学のゼミ所属だった管理人も監修しています。
はじめに
公認心理師に興味はあっても、試験対策や取得するメリットに不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
もし、あなたが心理職として人々の役に立ちたいと思っているならば、公認心理師の資格取得をおすすめします。
勉強のコツをつかみ、計画的にスケジュールを立てれば、公認心理師試験の合格は十分に可能です。
私は、3人の子育てと試験勉強を両立させ、第2回の公認心理師試験で一発合格を果たしました。
2019年よりカウンセラーとして活動を始め「心理のプロ」として自信を持ちながら、業務に向き合えています。
この記事では、公認心理師の目指し方や試験対策、取得のメリットなどを、実体験を交えながら紹介します。
公認心理師の受験に迷っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
公認心理師とは?
公認心理師は、心理職として日本で初めての国家資格です。心の問題を抱えた人を観察・分析し、問題を解決するための援助や助言を行います。
公認心理師が誕生した背景
公認心理師の資格ができた背景には、現場での支援に生じていたアンバランスさがあります。
医療・福祉・心理の連携に注目が集まる中、心理職だけが国家資格化されておらず、現場での観点の相違につながっていました。
そこで、2015年9月に公認心理師法が成立し、2018年9月に初の公認心理師が誕生したのです。
公認心理師の定義と業務
公認心理師法第二条に定められている定義と業務は以下の通りです。
「公認心理師」とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
- 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
- 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
業務を行う上では、秘密保持義務や信用失墜行為の禁止などが法律で定められています。
また、「心理師」の名称は公認心理師しか使えません。
すなわち、名称独占資格であり、国家資格保持者としての責務を負う義務があります。
臨床心理士は「士」で、民間資格です。
公認心理師の活動領域
公認心理師が活躍する場は、主に5つの領域です。
- 保健医療の領域(病院、保健所など)
- 福祉の領域(児童福祉施設、障害者相談施設など)
- 教育の領域(学校、教育センターなど)
- 司法・犯罪の領域(家庭裁判所、少年鑑別所など)
- 産業・労働の領域(企業内の健康管理室、ハローワークなど)
公認心理師には、各分野の専門家と連携・協働が求められます。
近年では、アウトリーチと呼ばれる自ら要支援者の元へ出向く支援が重要視されてきました。
公認心理師の業務範囲は非常に幅広く、多岐に渡る点を覚えておきましょう。
公認心理師になるには?
公認心理師の受験資格を得るルートは、主に4つのパターンに分けられます。
※詳しくは厚生労働省のHPでご確認ください。
1.大学および大学院で公認心理師に必要な科目を修了する場合(Aルート)
Aルートは公認心理師になるための基本ルートです。
公認心理師の受験資格を得るには、原則として心理系の大学・大学院で計6年間学ぶ必要があります。
心理系以外の学部を卒業した場合は、編入による方法が一般的です。
ただし、卒業までに必要な科目を履修できるか確認しておきましょう。
2.大学で公認心理師に必要な科目を修了した後、一定の施設で2年以上の実務経験を積む場合(Bルート)
大学院を修了していない場合はBルートを選択します。
このルートでは、文部科学大臣と厚生労働大臣が認定する「プログラム施設」にて、2年以上の実務経験を積まなければなりません。
※「プログラム施設」の詳細は厚生労働省のホームページを参照してください。
3.上記2つと同等以上の知識・技能を有する場合(Cルート)
Cルートは、海外の大学などで心理学を学んできた方が主な対象です。
卒業大学での単位履修状況や科目読み替え等の資料を提出し、文部科学大臣と厚生労働大臣から認定を受ける必要があります。
4.2017年9月15日の法施行以前に、大学や大学院に通っていた者 (D~Fルート)
公認心理師法の施行以前に、心理系の大学・大学院に入学または卒業した方は、D~Eルートで受験資格を取得します。
それぞれの大学や大学院で履修した科目が、公認心理師の科目に対応しているか確認してください。
大学院への進学が難しい方は、文部科学大臣と厚生労働大臣が認定する「プログラム施設」で2年以上の実務経験を積まなければなりません。
公認心理師試験の難易度と試験対策4つのコツ
公認心理師の試験は出題範囲が広く、難易度も高い点が特徴です。
過去5年間の合格率は40〜50%台が続いており、出題基準にあった試験対策をしなければ対応できません。
また、試験の合格基準は以下のようになっています。
次の条件を満たした者を合格者とする。
総得点230点に対し、得点135点以上の者(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した。配点は一般問題が1問1点、事例問題が1問3点である。)
合格基準は、総得点の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正するという考え方を基に決定することとしている。
第5回の公認心理師試験では、問題数は154問、そのうち事例問題は34問でした。
以上の点を踏まえ、公認心理師の試験対策のコツをみていきましょう。
実際に私が使っていたおすすめの参考書も紹介します。
コツその1:ブループリントをチェックする
ブループリントとは、公認心理師として業務を行うために必要な、基本的知識及び技能を具体的な項目で示したものです。
公認心理師試験設計表とも呼ばれています。
到達目標ごとの出題割合が記載されており、公認心理師に求められる力が一目瞭然です。
試験の半年前に、厚生労働省のページで公開されます。
ブループリントに沿った重要事項がまとめられた必携テキストも便利です。
「公認心理師 必携テキスト 改訂第2版」
福島 哲夫 (編集), 尾久 裕紀 (編集), 山蔦 圭輔 (編集), 望月 聡 (編集), 本田 周二 (編集)
コツその2:最初に過去問を解く
公認心理師の試験勉強を始める前に、過去問を解くのをおすすめします。
なぜなら、出題傾向を把握できるとともに、到達すべき学びのゴールを知る手がかりになるからです。
「この問題を解くためには、この分野を重点的に学習しよう。」など、自分の目標設定にも役立ちます。
公認心理師試験の過去問は、一般財団法人日本心理研修センターのホームページに公開中です。
解答・解説付きの過去問題集だとより効率的に学習できます。
「公認心理師過去問詳解 2021年9月19日 第4回試験 完全解説版 単行本」
著:京都コムニタス
「赤本 公認心理師国試対策2023 (KS心理学専門書)」
著:坂井剛、宮川純 監修:河合塾KALS
コツその3:2~3冊の参考書を並行して使う
公認心理師の試験対策で重要なポイントは、幅広い知識のインプットです。
そのために、2〜3冊の参考書を常に手元に置いておきましょう。
なぜなら、1冊の参考書だけで学習していると、知識の偏りが生じるからです。
複数の本に書かれている視点をまとめていくと、おのずと知識量が増えていき、自分だけの参考書が出来上がります。
「公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)」
著:宮川純 監修:河合塾KALS
「心理学 新版 (New Liberal Arts Selection) 単行本 (ソフトカバー)」
著:無藤隆、森敏昭、遠藤由美、玉瀬耕治
コツその4:試験までのスケジュールを立てる
公認心理師試験を攻略する最大のポイントは、本番までのスケジューリングです。
膨大な出題範囲を網羅的に学習するには、年単位の計画を立てる必要があります。
たとえば、前半で基礎心理学を学習し、後半で臨床心理学を積み上げ、直前に事例問題や模試で演習するといった計画です。
2024年度の試験より、毎年3月頃に実施される旨が決まっています。
年間計画をきっちりと立て学習していきましょう。
公認心理師試験では、事例問題の攻略が合格のキーポイントです。
この事例問題集は、著者の実体験をもとにした解説がされており非常に役立ちました。
「公認心理師試験 事例問題の解き方本 PartⅣ 単行本」
著:山口勝己
試験前には、最新の精神医学診断に関する知識を復習しておきましょう。
「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 単行本」
著:American Psychiatric Association
公認心理師を目指したきっかけと取得して感じたメリット
私が公認心理師を目指したきっかけは、自分の職務に専門性を持たせたかったためです。
ちょうど、第1回試験が終了した頃で、今後の先行きが不透明な点も多くありました。
しかし、試験内容を見てみると、かなり広い範囲の心理学の知識が網羅的に出題されているではありませんか。
試験対策をする中で、自分が知らない知識を習得できるに違いないと感じ、第2回公認心理師試験の受験を決意しました。
公認心理師を取得して感じた3つのメリット
公認心理師資格を取得して感じたメリットは次の3点です。
1.国家資格保持者として信頼されること
一番のメリットは、専門職としての信頼度が増した点です。
職場の同僚やクライアントから助言を求められる場面が多くなり、充実感があったのを覚えています。
2.自分の視野が広がったこと
公認心理師の試験勉強を通じて、視野が広がった実感を得たのも収穫でした。
公認心理師試験では、非常に幅広い知識が求められます。
その結果、自分にとって、新たな知見を獲得するきっかけとなりました。
このような知識は、ソーシャルワーカーや児童相談所、その他の関係機関との連携に大いに生かされています。
3.更新の必要性がないこと
公認心理師のメリットの一つは、更新制度がない点です。
臨床心理士には5年ごとに更新制度が設けられているのに対し、公認心理師には法律的に更新の義務が課せられていません。
更新に必要な費用がかからない点も、専門職として長く続けていくためには大きなメリットではないでしょうか。
これから公認心理師を目指す方へ
この記事では、公認心理師の目指し方や試験対策、取得のメリットなどを、実体験を交えながら紹介しました。
生きづらさやストレスに苦しむ方が増えている現代において、公認心理師は人々の心を専門的に支えてあげられる貴重な存在です。
数多くの不安があるかと思いますが、十分な対策を講じれば必ず合格への道は開けます。
公認心理師を目指すべきか、私もずいぶん迷いました。
「取得するメリットが分からない」「本当に仕事に役立つのだろうか」「家族の時間を犠牲にしてまで勉強すべきなのか」などの不安を感じていたのです。
しかし、今は取得して良かったと思っています。
なぜなら、新たな知識やスキルが身につき、クライアントに還元できる支援が増えたからです。
例えば、不登校に悩む小中学生の親子に対しては「自分だけで抱え込む支援」から「関係機関と連携する支援」に考えが変わりました。
発達支援センターや児童精神科、市役所やソーシャルワーカーとの連携をスムーズに行えるようになったのは、公認心理師取得の成果です。
学校だけでは対応できない精神症状や、家庭の養育問題への支援について、ケース会議などで堂々と意見を伝えられるようになりました。
専門職同士が連携すれば、悩んでいる親子への支援の手は増えます。
私自身も、親子のカウンセリングに集中でき、じっくりと丁寧に援助できました。
その結果、登校日数が増えたり、精神症状が改善できたりした子どもの様子を見るのが、非常にうれしかったです。
公認心理師の勉強はかなり大変でしたが、受験して良かったと思えた瞬間でした。
受験に迷っている方は、興味がある分野の学習をまず始めてみませんか。
将来のビジョンや、現在の仕事に役立つ知見が見つかるかもしれません。
信頼される心理職として働くためにも、ぜひ公認心理師試験にチャレンジしてください。
引用・参考資料
最後に
以上、「公認心理師とは?公認心理師になるには?」でした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ではまた、別の記事でお会いしましょう!